上顎前突の概要
上顎前突(じょうがくぜんとつ)は、いわゆる「出歯」と呼ばれる不正咬合の一種で、上の前歯や上顎全体が通常より前方に突き出している状態です。
日本人には比較的多くみられ、ある調査では2番目に多いと言われています。上顎前突は見た目だけでなく、咬み合わせや発音において、口の乾燥による虫歯・歯周病のリスク増加など、様々な問題を引き起こす可能性があります。
上顎前突は遺伝的要因や生活習慣によって引き起こされることが多いと考えられています。

上顎前突の種類
上顎前突には、大別すると以下の2種類があります。
歯性(歯槽性)上顎前突

顎の骨格の大きさに問題がなく、主に前歯の角度に問題があるケース。比較的軽傷の場合が多いと考えられます。
骨格性上顎前突

上顎骨自体が大きい、または下顎骨自体が小さい、あるいはその両方が原となっているケース。骨格が原因のため比較的重症であることが多く、抜歯が必要になる可能性が高くなり、稀に外科手術が必要になることがあります。
2つのタイプの見た目は似ていますが、治療法が異なるため、十分な検査と詳細な診断が必要です。
上顎前突の原因
上顎前突の主な原因は以下の通りです。
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遺伝的な骨格や歯の大きさの影響
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幼少期の指しゃぶり、舌の癖(舌突出癖)
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口呼吸の習慣
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永久歯の生え方や歯の大きさのアンバランス
これらの要因が複合的に関係して、上顎前突が起こることが多いです。
上顎前突が引き起こす問題
上顎前突は、次のような問題を引き起こす可能性があります。
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口呼吸になり易い常に意識していないと口が閉じられないため、口を開けていることが多く口呼吸になりやすい
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見た目にコンプレックスを感じやすい上顎前突の場合、歯茎が見えやすくなることが多い、出歯の見た目自体が気になる、口元がEラインより出ているため見た目が悪くなり易いなどの理由でコンプレックスを感じる方が多く見られます。
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発音に支障が出る(特にサ行やタ行)前歯に前後的なズレがあるため息が漏れやすく、発音しづらいと感じる方が多くいらっしゃいます。
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前歯が折れやすくなる上の歯が前にあるため、転倒や打撲の際に上の前歯をぶつけてしまい受傷する方が多く見られます。最悪のケースでは上の前歯が折れたり脱臼してしまうこともあります。
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虫歯や歯周病のリスクが高まる口をあいている時間が長いため、唾液量が減少してしまい前歯の乾燥を引き起こします。唾液には酸性度を調整する、口腔内の細菌を洗浄する、食べ物や飲み物の糖分が歯にくっつくのを減らすなどの機能があるため、唾液が減少するほど虫歯や歯周病のリスクが高くなります。
このように上顎前突であれば審美面だけでなく、機能面のトラブルや将来の健康リスクにもつながります。
上顎前突の治療法と装置
治療を開始するタイミング
上顎前突の治療にも、年齢や成長の状況に応じて最適なタイミングがあります。
小児期(6~10歳頃)
旺盛な成長を利用して、顎骨の発育をコントロールする矯正治療が可能な時期で、最も望ましい開始時期の1つと考えられます。顎の幅を広げたり、小さな下顎の前後的な成長を促すことで、永久歯抜歯の可能性を下げられる場合もあります。
思春期~成人期
成長が終了しているため、歯の移動をメインに行う矯正治療が中心となります。歯の角度の調整や、抜歯による空隙を利用して前歯を下げる治療が多くなります。抜歯のみでは改善出来ないほど骨格に問題がある場合、外科手術も検討されます。
上記の理由から、できるだけ早めの受診・相談をおすすめします。
症例
上顎前突は、見た目だけでなく、健康や生活の質に関わる重要な問題です。
当院では、患者様一人ひとりの成長段階や症状に応じて、最適な治療プランをご提案いたします。気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。


開始年齢 | 26歳 |
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主訴 | 上顎前突、叢生、横顔 |
診断 | 狭窄歯列を伴う骨格性Ⅱ級症例 |
抜歯 | 上顎両側第二大臼歯 |
装置 | インビザライン |
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期間&回数 | 3年6か月&23回 |
費用 | 837,540円 |
リスク | 歯肉退縮、歯根吸収 |