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矯正治療中にMRIを撮影するとき、装置を外す必要はあるか?

基礎知識

なぜ矯正装置を外す可能性があるのか?

矯正治療を受けている患者様から、「MRIを撮ることになったのですが、装置は外さないといけませんか?」というご質問を頂くことがあります。
MRI(磁気共鳴画像装置)は、非常に強力な磁場と電波を使って体の内部を撮影する検査機器です。レントゲンやCTと違い、放射線を使わない安全な検査ですが、金属が体の中や周囲にあると影響を受ける可能性があるため、矯正装置が問題になることがあります。

この記事では、矯正治療中にMRIを受ける際に「装置を外す必要があるか」「そのままでも大丈夫な場合はどんなときか」を詳しく解説します。

MRI撮影装置

1. MRI撮影で金属が問題になる理由

MRIは強力な磁場を発生させる装置で、その磁力の変化を読み取って画像化します。
そのため、磁性をもつ金属(鉄・ニッケル・コバルトなど)が体の中や近くにあると、いくつかの問題が生じる可能性があります。

① 画像が歪む(アーチファクト)

金属があると周囲の磁場が乱れ、MRI画像に「黒い影」や「歪み」が生じることがあります。これを「アーチファクト」と呼びます。
特に頭部や顎関節など、金属の近くを撮影する場合は画像が読めなくなることがあり、診断の妨げになる可能性があります。矯正装置以外でも、一部の入れ墨や化粧品でもアーチファクトを起こすことが知られています。BioMed Central+3PMC+3PMC+3

② 発熱することがある

MRIでは高周波(RF)エネルギーを使うため、金属部分が電波を吸収して熱をもつことがあります。
実際には大きなやけどを起こす例はまれですが、ステンレス製のブラケットやワイヤーなどが複数あると、わずかな温度上昇が起こることが報告されています。安全面を考慮し、装置の種類によっては外すよう指示されることがあります。PMC+1

③ 磁力による引っ張り・動き

MRIの磁石は非常に強力(1.5〜3テスラ)で、鉄を含む金属を引き寄せる力があります。
ただし、現在の矯正装置はほとんどが小型でしっかり固定されているため、実際に動いて危険が生じることはほとんどありません。
それでも「安全を最優先」する医療現場では、万全を期して金属の有無を事前に確認します。


2. 外す必要があるかどうかは「部位と素材」で変わる

矯正装置を外すかどうかは一律ではなく、撮影する部位と装置の素材によって判断が変わります。

判断項目外す可能性理由
頭部・顎関節(TMJ)・上顎洞高い金属が撮影部位に近く、画像が乱れやすい
頸部・頚椎やや高い下顎金属の影響が出ることがある
胸部・腹部・脊椎低い口腔内金属が離れており、画像への影響は少ない
膝・腰・手足ほぼ不要影響はほとんどなし

fukuoka.rf-ortho.com+3PMC+3PubMed+3

BioMed Central+3PubMed+3PMC+3


3. 装置の素材別の注意点

矯正装置にはさまざまな素材があります。素材によってMRIへの影響も異なります。

ステンレススチール製(一般的な金属ブラケット・ワイヤー)

  • 強い磁性をもつため、画像の歪み(アーチファクト)が大きい
  • 特に頭部・顎関節MRIでは診断画像が乱れる可能性が高い
  • できるだけ撮影前にワイヤーを外すか、必要に応じてブラケットを一時撤去することもあります

チタン製ブラケット・ワイヤー

  • 非磁性金属であり、磁場の影響をほとんど受けない
  • 安全性は高いが、わずかにアーチファクトが出ることもある
  • 多くの場合は外さずに撮影可能
  • PubMed+2BioMed Central+2

セラミックブラケット・プラスチックブラケット

  • 磁性をもたないため、MRIにほとんど影響なし
  • 外さず撮影できるケースがほとんど
  • ただし、ワイヤー部分が金属であれば、その部分だけ外すことを推奨される場合があります

リテーナー・保定装置

  • 金属線があるタイプは、頭部MRIでは外す必要がある場合があります
  • マウスピース型(透明リテーナー)であれば撮影にほぼ影響なし
  • 取り外しが容易なため、撮影時は一時的に外すのが安全ですBioMed Central+2shin-ortho.com+2

4. 実際の流れ:検査前にどう対応すればいいか

① 検査予約時に「矯正治療中」であることを伝える

MRIを予約する際、必ず「矯正装置をつけています」と伝えてください。
病院側はその情報をもとに、装置の素材や部位に応じて撮影方法を検討します。

② 矯正歯科で装置の素材や構造を確認する

担当の矯正歯科医は、どの部位にどんな素材を使っているかを正確に把握しています。
検査を受ける前に「MRIを受ける予定があります」と伝えることで、必要に応じてワイヤーを外したり、一部のブラケットを一時的に撤去するなどの対応が可能です。

③ 撮影当日は技師・医師の指示に従う

MRI技師や放射線科医は、装置の有無・素材・部位を確認したうえで「外すかどうか」を判断します。
病院によっては、装置の素材を確認できない場合、安全のために外すよう求められることもあります。


5. 実際の研究報告・臨床データから

複数の研究によると、矯正装置の影響は素材や部位によって大きく異なります。

  • ステンレススチール製ブラケットでは顎関節のMRI画像に強い歪みが生じる(J Oral Maxillofac Radiol 2019)
  • チタンブラケットはアーチファクトがごく小さく、安全に撮影可能(Dentomaxillofac Radiol 2016)PubMed+2BioMed Central+2
  • セラミックブラケットはMRI画像にほとんど影響を与えない(BMC Oral Health 2022)
  • 遠隔部位(膝・腹部など)では、口腔内金属の影響はほぼ無視できるレベル(Radiology Research Pract. 2018)

このように、装置の素材と撮影部位の距離が重要な判断ポイントです。


6. 矯正歯科医の立場からのアドバイス

アクア矯正歯科クリニック(高崎)でも、患者様がMRI検査を受ける際には、以下のような手順をおすすめしています。

  1. MRIを受ける前に、必ず当院にご相談ください。
     どの装置がどの金属を含むかを確認し、必要に応じてワイヤーのみを外すなど柔軟に対応します。
  2. 撮影部位を教えてください。
     頭部や顎関節なら一部撤去を検討しますが、胸や腰、膝などの場合はそのままで問題ありません。
  3. MRI施設の担当者へ、装置の材質情報を伝えます。
     チタンやセラミックなど非磁性素材を使用している場合、撮影可能なことが多いです。
  4. 撮影後はすぐに再装着できます。
     一時的にワイヤーを外すだけなら、再装着の手間もわずかで、治療に影響はほとんどありません。

7. まとめ:MRI撮影時の矯正装置対応まとめ

撮影部位装置の素材外す必要備考
頭部・顎関節ステンレス外す必要あり画像が大きく歪む
頭部・顎関節チタン・セラミック外さなくても可影響が少ない
胸部・腹部・脊椎すべての素材不要影響ほぼなし
手足・膝などすべての素材不要問題なし
保定装置(リテーナー)金属線あり外す取り外し簡単
保定装置(透明)樹脂製不要撮影OK

8. 最後に ― 安全で正確な検査のために

MRIは、体に負担をかけずに非常に精密な画像を得られる優れた検査です。
矯正装置がついていても、ほとんどのケースで安全に撮影できますが、装置の種類や撮影部位によっては外した方がよい場合もあります。

矯正治療中のMRI検査では、

  • 矯正歯科医
  • 放射線科医
  • MRI技師

この3者が情報を共有し、最も安全で最適な方法を選ぶことが大切です。

アクア矯正歯科クリニックでは、装置の材質や構造を把握し、医療機関との連携を行いながら安全に検査を受けていただけるようサポートしています。
MRIを受ける予定がある方は、撮影の前に必ずご相談ください。


アクア矯正歯科クリニック
〒370-0052 群馬県高崎市旭町24-6SJ旭町ビル2階
院長:田村 剛
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