MFT(口腔筋機能療法)とは、正しく咀嚼・嚥下をするための訓練や、
安静時における舌や口腔周囲筋の正しい動きを習慣化させ機能させるようにすることです。
人間は、1日600回前後の嚥下(食事の時や、無意識に唾液を飲み込んだりする)をしていると言われています。但しその都度、舌で歯を押した飲み込み(嚥下)「これを舌癖といいます」を続けていると毎日の積み重ねで、歯並びに影響が出る可能性があります。例えば、上下の歯が咬み合わない開咬や、歯と歯の間に隙間ができてしまったり、上顎前突(上の前歯や上顎が前方に出ている歯並び)や下顎前突(下の歯が上の歯より前に出ている反対咬合)等の、様々な不正咬合をもたらす原因となります。
また、折角矯正治療をしても舌癖があると、後戻りの原因にもなります。
では舌癖があるのか確認をするには、手鏡で自分の口元を見ていただき唾液を飲み込んでみて下さい。この時、舌が歯に触れているようなら、舌癖があるということになります。この舌癖を治さなければ、綺麗な歯並びを維持することは難しくなります。では舌癖を治すのにはどうすれば良いのでしょうか?
まず、普段口を閉じている時、正しい舌の位置は上顎にあります。正確に言うと「スポットポジション」の位置になりますので、下記の上顎の図にスポットポジションの位置を示します。
舌はスポット(舌の先を切歯乳頭の下の少しくぼんでいる所)につけて、舌全体を上顎に自然に吸い上げ口を閉じます。
この時、奥歯は噛みしめません、上下の歯が触れないようにします。
普段、人の話しを聞いている時や、テレビや携帯電話、パソコン等を使用している時など自分が話す時以外は、舌は上顎にあります。なお舌癖のある方は、常に舌が下に落ちている状態にあります。正しい舌位を維持する又は改善するためには、普段生活する上で意識して頂きたい事が4つあります。
① 口を閉じ鼻呼吸にする
② スポットポジションに舌を置く
③ 姿勢を正しくする
④ 良く噛んで食べる
詳しい説明は、以下を確認してください。
① 口を閉じ鼻呼吸にする
口を閉じていないと舌はスポットポジションにいきません。試しに口を少し開けてみて下さい、舌が下に落ちている状態になります。
しかし、今まで舌が下にあるのが当たり前だった人の場合は、口を閉じてもスポットポジションにはいかないと思います。下にある舌を上顎に持っていくには、舌の力が必要です。舌のトレーニングをして舌力がついてくると徐々に上顎にいくようになります。
また、鼻呼吸をしていると、空気中に舞う菌や異物は体内に入り込まない様な仕組みになっていますが、口呼吸をすると、菌が直接体内に吸い込まれてしまいます。
すると、免疫機能がダメージを受け、抵抗力も低下させてしまい、風邪をひきやすくなるだけでなく、虫歯や歯周病が発症しやすくなってしまいます。
口呼吸をしていると、口の中が乾燥して口臭の原因にもなります。
唾液には抗菌作用、歯の再石灰化、消化作用、自浄作用など口の中を清潔に保つ働きがあります。
そして、口呼吸をしていると、舌が気道を塞ぎやすくなりいびきの原因となります。
② スポットポジションに舌を置く
しばらくは意識をしてスポットポジションに舌を持っていくようにして下さい。最初は舌力がありませんので意識をしないとスポットポジションへ舌がいきません。
③ 姿勢を正しくする
普段テレビや携帯電話を見たり、何かに夢中になっている時等、背中が丸まって猫背になっていませんか?この様な姿勢をしていると口がポカンと開きやすくなります。前述で説明したように口が開くと、舌が下に落ちてしまう為、姿勢も気を付けるようにしましょう。
④ 良く噛んで食べる
正しい飲み込み(嚥下)方は、「舌の先はスポットにおき奥歯で噛んで舌の奥と喉を使って飲み込みます」数回しか噛まず食べ物が大きいままでは、この正しい飲み込み(嚥下)方で食べ物を飲み込むのは困難です。ですから、良く噛んで細かくし噛むことによって唾液が十分に出ることで、食べ物と唾液が混ざり合い正しい飲み込みができるのです。
最終的に正しい飲み込み(嚥下)方を身につけることが、綺麗な歯並びを維持するためには重要なことです。
この正しい飲み込み方を身につけるためには、毎日4つの意識と
5~10分の舌のトレーニングをして舌力をつけます。
そして徐々に飲み込みの練習をして、最終的に正しい飲み込み方を
習得して頂きます。今まで当たり前に飲み込みをしてきた舌癖を治
すのは大変かと思いますが、普段の意識と舌のトレーニングを行い
綺麗な歯並びを維持して頂けたらと思います。
最後になりますが、意識して頂きたい4つの1つでも欠けると、
また舌癖が出てきますので普段からの意識を忘れないでください。